「アフリカ」と聞いて何を思い浮かべるだろう。
美しい平原が広がり、どこまでも続く地平線。
色のない死の世界が続く灼熱の砂漠。
うっそうとした木が茂る、人間が立ち入ることもはばかれるほど神聖なジャングル。
もしかしたらもっと現実的な光景を思い浮かべるかもしれない。
長く続く戦争や紛争によって傷ついた人々。
貧困にあえぎ痩せ細った人々。
そして争いや飢えが原因で泣き叫ぶ子どもたち…
このどれもが現実で、リアルなアフリカであることに間違いない。
でも決してこれが全てではない。
中央アフリカ共和国は文字通りアフリカ中央部に位置する。
日本から飛行機で丸々2日間かけてこの国へ取材で来た僕は、
すぐにこの国の魅力にとりつかれてしまった。
現在も戦時下にあるこの国での僕の取材目的はもちろん戦争や紛争によって傷ついた国と人々だった。
それは日本では想像もつかない悲惨な出来事であったけれど、
それでも僕の心に強く残ったのはそれでも懸命に今日を生きている人々の姿だった。
悲しい過去を持った人々は明日を信じて笑っている。
小さな子どもたちは兄弟ゲンカをしながらも笑顔で仲良くお家のお手伝いを一生懸命にやっている。
そんな彼らに囲まれて一緒に過ごしていると
降り注ぐ太陽も、頬を撫でていく熱風も、涼しい日陰を作ってくれる木々も、轟々と流れていく大河も
その全てが意味のあることのように思えてくる。
それはどこに国にいても感じられる感情だった。
もしかしたら自分で勝手にここを特別なものにしようとしてただけなのかもしれない。
この国の暗い影ばかりを追いかけようとしていた自分が恥ずかしく思えた。
内戦が続くこの国にも笑顔があるし美しい瞬間がある。
どんなに遠い国であっても、理解のしがたい戦争が続く国であっても、
ここには僕らと同じ日常がある。
景色も言葉も文化も全く違う遠い国だけど、
僕らと何にも変わらない日常があり、そして豊かな人々がいるということに気づいてもらえたらと思う。
Photograph by Hiroshi Aoki